大学院保健学研究科は保健学の研究を行い、高度な保健医療人に加え保健学研究者と教育者を養成するために、平成 23 年度に大学院医学系研究科から独立しました。博士前期課程と後期課程で構成されています。
少子高齢化社会となった我が国においては、社会構造や生活習慣の変化に伴い、疾病・障害の構造が大きく変化するとともに、新たな保健医療問題が多数生じています。また、国民の健康志向が高まり、生活の質の向上や健康寿命の延長が求められています。こうした人間の健康を維持するための取組みは、病気の解明や新しい治療法の開発のみでは達成できません。その理由は、人々の健康が社会・政治・経済状況、地域性、さらにケアに携わる様々な医療人の資質に大きく左右されるからです。保健学は、健康な生活に向けた統合的なアプローチを行い、健康な人たちで構成される地域社会を目指す学問と考えられます。
一方、国際社会においては保健人材の不足が深刻化しています。国連や WHO は、AIDS 等の感染症の撲滅や周産期・小児期死亡率の低下に向けた世界的な取組みを行っており、質の高い保健人材育成をはじめとした保健システムの強化を求めています。
こうした社会的要請に応えるため、博士前期課程では研究対象課題によって「基礎保健学ユニット」、「応用保健学 ユニット」、「地域・国際保健学ユニット」を配置して職種横断型かつ全人的アプローチの研究・教育体制を構築しました。博士後期課程では、専門領域の研究を深化させるために、職種に応じた 3 領域「看護学領域」、「生体情報検査科学領域」、「リハビリテーション学領域」に分けたカリキュラムを組み立てています。こうして、全人的医療を理解し、高度な専門知識と技術を持つ保健学研究者・教育者そして実践者の養成を行っています。
本研究科では、既に医療・保健の分野で活躍されている方々が、現場で直面する様々な問題を研究課題として取組む地域密着型の研究体制を構築しています。これは、平成 19 年度に『文部科学省大学院 GP』として高い評価・支援を受けて始めた「地域・大学院循環型保健学リーダーの育成」事業を基盤としています。この地域交流に基づく教育は、『教育 GP』として支援を受ける学部教育と合わせて、学部・大学院の一貫した教育システムとなっています。また、先進的チーム医療教育の実績は国際社会から高い評価を受け、平成 25 年に WHO 協力センターに指定されました。チーム医療教育に関する研究、アジア地域の教育者・実践者への指導・トレーニングおよびガイドラインの開発などを積極的に進めています。さらに、がん看護、老人看護、慢性疾患看護および母性看護専門看護師養成コースや、指導的臨床研究コーディネーター(CRC)の育成を行う CRC 管理者養成コースも開設しています。平成 26 年度には、『文部科学省 GP:課題解決型高度医療人材養成プログラム』の優れた取り組みとして「群馬一丸で育てる地域完結型看護リーダー」事業が採択されました。超高齢社会において「地域での暮らしや看取りまでを見据えた看護」が提供できる人材養成を全国に先駆けて行っております。
こうした具体的な成果を基に組み立てられた教育システムで、社会の要請に対して真摯に耳を傾け、新たに生まれる課題に柔軟にそして創造的に対応する能力を養う意欲のある皆様の入学を期待しています。